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お口の中の悪いやつら〜口腔最近の犯罪白書〜

皆さん、こんにちは!中里デンタルクリニック.歯科衛生士の田口です。皆様いかがお過ごしでしょうか?寒い日が続いていますので、体調管理に気をつけてください。

さて、今回はお口に潜む細菌についてお話しします。

私たちのお口に棲む細菌は1000種類以上と言われています。きれいに歯磨きしても100億個が棲み、雑だと1兆個も棲んでいる場合があります。切っても切れない細菌との縁。上手に付き合う作戦が必要です。


<感染細胞のタンパク質に依存するパラサイト>

ミュータンス菌、ジンジバリス菌などの細菌は、1000分の1ミリ(1マイクロメートル)ほどです。一方ウイルスはその10分1以下。ふつうの顕微鏡では見ることができません。

生物(細菌を含む)は遺伝子DNAを持っており、その情報をメッセンジャーRNA(mRNA)に伝えます。そしてDNA情報を受け取ったmRNAが、細胞内にたくさんあるリボソーム粒子に結びついてタンパク質を作って生きています。

それに対してウイルスは、DNA、RNAのどちらかをタンパク質で包み込んだ粒子です。標的とする細胞に感染するとその遺伝子を細胞のなかに放り込んで、生きた細胞のタンパク質合成系を乗っ取らない限り仲間を増やせない、偏性細胞寄体のパラサイトです。

つまりウイルスは、自分だけでは生きていけないことから、真の生物とは言えません。動物の細胞には、さまざまなウイルスが潜んでいます。渡り鳥にはインフルエンザウイルスが、コウモリにはコロナウイルスが、そしてアフリカのサルにはエイズウイルスやエボラ出血熱などのウイルスが潜んでいます。それと同じく、ヒトにしか潜伏しない神出鬼没のウイルスが、水疱(ヘルペス)をつくるヘルペスウイルスです。


<体力低下をねらって粘膜や神経に潜伏>

ヒトに感染するヘルペスウイルスは8種類あり、そのひとつ、「単純ヘルペスウイルス」は、お口の周りの粘膜などで増えて、熱を帯びてかゆいところに水疱を作り、水疱が破れてかさぶたになって治ります。

しかしこのウイルス、治ったあともそのまま細胞に潜伏します。そして、忘れた頃に再び発症する、いわゆる「回帰発症」を起こすやっかいなウイルスです。

潜伏する単純ヘルペスウイルスは、風邪などで抵抗力が低下すると増殖します。このとき小水疱をつくりますが、ときには顔面神経麻痺や脳炎を起こして命を奪うことすらあります。

「水痘・帯状疱疹ウイルス」もへルペスウイルスの一種で、初感染と回帰発症では症状が異なります。初感染では約2週間の潜伏期を経て水痘を発症しますが、治ったあとも神経節の細胞に潜伏し続け、帯状疱疹を回帰発症させます。帯状疱疹は痛みがひどく、知覚神経の通り道にそって炎症性疱疹ができます。知覚麻痺や脳炎などの重篤な炎症が起きることもあり、油断なりません。

お口に疱疹ができると、激しい痛みで食事をするのもつらいほどです。

抗ヘルペスウイルス薬で早く治療を受けると治りも早いので、疑わしいときはすぐに受診して早期発見し治療を受けましょう。

お口のなかの悪いやつらは私たちの口に棲んでおり、根絶は不可能。大事なのはいかにしてやつらを抑え込み、好き放題させないかです。

そのために重要なのがお口のお掃除、そして健康的な生活習慣を継続すること。やつらに負けないように健康を守っていきましょう!

【ヘルペスウイルス】

●性格

・しぶとい、しつこい、我慢強い

●得意技

・いないふり

●好きなもの

・感染した細胞のタンパク質合成系を利用しないと生きられない