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高齢者のいのちをひそかに狙うジンジバリス菌!

みなさんこんにちは!歯科衛生士の木村です。

もうすっかり春ですね。今年は桜の開花も例年より早いようです。

4月から当院に2名の仲間が加わりました。どうぞよろしくお願いします!

今回は高齢者の命を狙う「ジンジバリス菌」についてお話します。

▼お口にひそむ誤嚥性肺炎の原因菌

日本人の死因で、がんと心臓病についで多いのが肺炎です。

なかでも高齢者の死因の上位を占めるのが誤嚥性肺炎。誤嚥性肺炎とは、お口やのどに棲む細菌たちが唾液や食べ物に混ざり、知らないうちに気道に流れ込んで炎症を引き起こす病気です。

いろんな細菌が混ざり合った唾液が気道に入り込むことは、誰でも少なからずあることです。しかし、元気な人であれば、むせて咳をすることで気道から唾液を跳ね飛ばすことができますし、気道に細菌が入り込んだときには、肺胞にいるマクロファージ(貪食細胞)が瞬時に喰い殺してくれます。

誤嚥性肺炎を起こしやすいのは、感染に対する防御機能の低下した易感染性宿主。つまり、体力が衰えて日常生活動作(ADL)が低下し、免疫力も落ちついている高齢者です。

こうした人たちは、細菌を押し返す気道粘膜の絨毛の活動が低下し、咳反射も弱くなっているため、誤って気道に流れ込んだ細菌入りの唾液をうまく排除することができません。

また、口の周りの筋力の衰えとともに飲み込みがうまくできなくなって、唾液や食べ物が気管にスルリと入り込みやすくなると、大量の細菌が肺に入り込みます。そのうえ免疫細胞の働きも低下しているために、重篤な肺炎を起こしてしまいます。

▼ジンジバリス菌の巧みな戦略

じつは誤嚥性肺炎の原因菌として巧みに立ち回っているのが、前号でも取り上げたジンジバリス菌です。ジンジバリス菌は、免疫細胞の攻撃をすり抜けるタンネレラ菌やトレポネーマ菌とタッグを組み悪玉3兄弟を結成、重篤な肺炎を起こします。

さらに厄介なのが退治しにくいこと。この悪玉3兄弟がつくるネバネバ物質がやつらを守ってしまうので、抗生物質が効きにくいのです。

▼ウイルス+細菌の混合感染を防ごう!

歯周病の原因菌である悪玉3兄弟は、粘膜を傷めるタンパク質分解酵素を出しますが、それだけでなく、増殖したウイルスが別の細胞に感染するときに働くノイラミニダーゼという酵素も放出します。

これらの酵素は、ノドの細胞にあるレセプター(ウイルスが入り込む鍵穴)を隠す粘液層を溶かして露出させるので、ウイルスの細胞への侵入を容易にしてしまいます。

また、ジンジバリス菌をはじめとするお口の細菌とインフルエンザウイルスや新型コロナウイルスが混合感染すると、肺炎のさらなる重症化を引き起こすことも明らかになっています。

悪玉3兄弟に酵素をつくらせないために、そして口腔細菌とウイルスの混合感染を引き起こさないために、お口の清潔を心がけましょう。