歯周病は成人の多くが歯周病の兆候を持つと報告されており、「平成28年歯科疾患実態調査(厚生労働省)」によると、30代以上では、3人に2人の歯周組織に所見が見られたことから、「30代以上の3人に2人は歯周病」とも言えます。
しかし、歯周病の症状は、初期段階ではほとんど自覚されないため、多くの人々が気づかないうちに進行してしまいます。
この記事では、患者様に歯周病の恐ろしさを理解していただくことを目的としています。
そして、早期発見と予防のために定期検診がいかに重要であるかを詳しく探ります。
※歯肉の所見の有無(15歳以上・永久歯)(歯周組織に所見ある場合を歯周病とする)
「平成28年歯科疾患実態調査(厚生労働省)」
◾️お口の中は細菌だらけ
私たちの口の中には、なんと約400~700種類の細菌が住んでいます。これらの細菌は通常は悪さをしませんが、適切なブラッシングが不足したり、砂糖を過剰に摂取したりすると、ネバネバした歯垢(プラーク)を作り出し、歯の表面に付着します。
この歯垢1mgには約10億個もの細菌が存在し、むし歯や歯周病の原因となります。
※日本臨床歯周病学会サイト参考
◾️歯周病ってどんな病気?
歯周病は、細菌感染による炎症性疾患で、歯ぐきや歯を支える骨が溶ける病気です。初期には痛みがほとんどなく、歯ぐきの辺縁が炎症を起こして赤く腫れることがあります。しかし、進行すると膿が出たり歯が動揺したりし、最終的には歯を失うことになります。
② 歯周病の進行過程
歯垢の細菌が歯肉に炎症を引き起こし、やがて歯を支える骨を溶かすことにより、歯を失うリスクが高まります。さらに、歯垢が硬化して歯石に変化すると、ブラッシングでは取り除くことができず、細菌が歯周病を進行させる毒素を出し続けます。
◾️歯周病を進行させる原因
歯周病の進行には以下のような因子が影響します。
– 糖尿病
– 喫煙
– 歯ぎしりやくいしばり
– 不適合な冠や義歯
– 不規則な食習慣やストレス
– 全身疾患(糖尿病、骨粗鬆症、ホルモン異常)
– 薬の長期服用
– 部分的に歯がないことによる負担増加
– 両親が若い時から入れ歯だったこと
– 口呼吸の頻度
– 免疫抑制剤の使用や免疫低下
これらの因子に心当たりがある方は、歯周病のリスクが高いため、歯科医師に相談することをお勧めします。
◾️当院の歯周病治療
当院では、むし歯や歯周病の原因となる歯の表面の菌の塊を除去することに重点を置いた治療と予防を提供しています。
一例として、バイオフィルム除去に「エアフロー」を取り入れています。治療方法や感じ方には個人差がありますが、できる限り患者様の負担軽減に努めています。
※エアフローを用いたプロフェッショナルクリーニングは自由診療です。
費用は11,000円、治療時間は45分〜60分、主なリスクは以下の通りです。
・歯と歯ぐきの境目に歯石が多く付着している方は、歯石除去後、多少の出血が見られることがあります。
・多くの場合、クリーニング後は、すぐに出血はおさまり、1~2日で歯茎は治癒していきます。
・歯ぐきの腫れや歯肉炎のある方は、器具があたることにより、痛みや出血を伴うことがあります。
また、歯周病の患者様には以下の治療をご案内しております。
①スケーリング
予防処置や初期の歯周病治療には、スケーリングを行います。スケーラーを使用して、歯石を除去することで、普段の歯みがきでは届かない歯間や歯周ポケットの歯垢や歯石をきれいにします。
②SRP
予防処置であるスケーリングとルートプレーニング、2種類の頭文字を取ってSRPと呼ばれます。
スケーリングで歯の表面の歯垢や歯石を取り除き、ルートプレーニングで歯周ポケット内のバイオフィルムや歯石を徹底的に除去し、歯周病の予防と軽度歯周病の回復を目指します。
③歯周外科処置
歯周病が進行し、歯周ポケットが深くなった場合には、外科処置が必要です。
歯ぐきを切開し、歯根に付着した汚れを徹底的に除去することで、歯ぐきの健康の回復を目指します。
◾️歯周病予防には定期検診受診を活用しましょう
定期検診の基本的な役割は、歯周病の早期発見です。
特に、歯周病の初期段階である歯肉炎は、しばしば痛みが伴わないため気づかれにくく、知らず知らずのうちに進行してしまうことがあります。
歯肉炎の段階での症状は、歯ぐきの腫れや出血程度ですが、放置すると歯周炎へと進化し、歯を支える骨の破壊が始まります。
定期検診を受けることで、歯周病の初期症状を見逃すことなく、適切な処置やアドバイスを受けることができます。
定期検診を受けることのメリットはこれだけではありません。
日々のセルフケアだけでは取り除ききれない歯垢や歯石を、専門的な器具を使って除去することができ、これにより歯周病のリスクを大幅に減少させることができます。
特に歯石は、歯周病菌の棲み家となり、炎症を悪化させるため、定期的な除去が非常に重要です。
さらに、歯科医師や歯科衛生士による指導を受けることで、正しい歯磨きの方法や歯間ブラシの使い方など、セルフケアの質を向上させることができます。
自分自身のお口の状態に合ったブラッシングができていない方も多いため、
歯科医師・歯科衛生士からのアドバイスは非常に有益です。
正しいケアを継続することで、歯周病の予防効果は格段に高まります。
まとめ
歯周病を防ぐためには、定期検診を欠かさず受けることが不可欠です。
早期発見と適切な処置、プロによるクリーニング、セルフケアの質の向上、そして健康管理意識の向上という多くのメリットを享受できる定期検診を、ぜひ積極的に活用してください。