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歯のしくみ(歯髄)

こんにちは。中里デンタルクリニックのアシスタント荒谷です。12月になってぐっと冷え込み、初雪が降りましたね。本格的な冬の到来です。免疫力を下げずに、丈夫な歯でたくさん食べながら感染症予防をしていきましょう。 さて、今回は歯の仕組みの中でも、「歯髄」についてのお話です。いわゆる「歯の命」で、一般的には「神経」と呼ばれています。神経が通っていて、痛みを感じる器官であることは、みなさんもご存知かと思います。歯髄の神経細胞は、歯に加わる刺激を何でもかんでも痛覚に翻訳します。冷たいものも「痛い!」熱いのも「痛い!」など、あらゆる刺激を「危機だ!」と感知し、パッと強い警告を出します。 また、歯髄は痛覚を司る他に、象牙質に栄養を送ったり、細菌から守る仕事をしています。それを担うのが、歯髄を構成する血管とリンパ管です。血管とリンパ管は体の他の部分と同じように、栄養や酸素、水分、そして免疫細胞を歯に運びます。血液とリンパ液が象牙質を養い、内部に入り込んだ細菌と戦って抵抗してくれます。この血液とリンパ液の流れは、細胞が内部に入るのを防ぐ働きもします。これらの流れが歯の外側に向けた微弱な圧力を生み、象牙質から入ろうとする細菌を押し戻してくれているのです。 内部に侵入した細菌と戦い、血液とリンパ液の圧力で細菌の侵入を防ぐ機能を持つ歯髄ですが、実は致命的な弱点があります。エナメル質に穴が開き、歯の内部に多量の細菌が侵入すると、免疫細胞が必死に応戦します。やっつけた細菌の死骸は、本来は根の先を通る細い血管から排出されます。しかし、出口があまりに狭いために、膿は歯の内部に溜まり、歯髄の細胞たちは溺れて死んでしまうのです。歯髄が戦っている間は強烈に痛みますが、力尽きると痛みも消えます。 死んだ歯髄は、溜まった膿と一緒に取り除かなければいけません。これが「根の治療」です。根の治療をした歯は、虫歯になりやすくなります。なぜなら、細菌と戦う免疫細胞も細菌を押しやる血液とリンパ液の圧力も少なくなるからです。しかも、象牙質は栄養をもらえず脆くなり、膿で汚染された内部の歯質は削って掃除せざるを得ません。危機を警告する神経細胞もいません。つまり、歯髄がなくなると歯の保存にとって大変不利なのです。 歯髄が小さな刺激も痛みに翻訳するのは、それが歯髄にとって本当に危機だからかもしれません。痛くなくても普段から歯科を受診して予防をしたり、虫歯を放置せず早めに治療を受けて歯髄を守りましょう。特に、根の治療を受けた方は、定期検診が必須です。当院では3ヶ月に一度のメインテナンスにお越しいただいております。天然の歯に勝るものはないので、ぜひ、「悪くならないように予防する」ことの大切さを今後も皆さんにお伝えし続けていきたいと思います。