今回私がご紹介するのは咀嚼についてです。歯科的には「目で食べ物を視認する」段階を含め、食べ物が飲み込まれるまでの工程を「摂食嚥下」といいます。中里デンタルクリニックでは50歳以上の方には口腔機能低下症という検査を行っています。噛むことはできるけど飲み込むことができない…。高齢になったときこんな症状が起きないためにも今のうちからお口周りの筋肉と舌の力を鍛えておきましょう!!
主に口の機能は【捕食ゾーン】【咀嚼ゾーン】【嚥下ゾーン】の三つに分かれています。まず捕食についてご説明します。
【捕食ゾーン】くちびる
くちびるは超高性能なマニピュレーター兼センサーです。食べ物を包み込むように咥えながら、形状やかたさ、温度や触感を瞬時に感じ取って脳に送ります。
くちびるが食べ物に触れたとき、「かたいな」と思ったら、お口に含む量が自然に少なくなりますよね。これはくちびるが感じ取った情報を脳が瞬時に判断して、ひと口量を調節するよう指示しているからです。また、くちびるはかたさ以外にも、食べ物の形状や温度、触感などを感じ取って脳に送ります。くちびるを通っている感覚神経は、からだの他の部位とは比べものにならないくらい繊細です。いろいろな情報を感知できるように、重要な神経も多く分布しています。
おっと、話しているうちに食べ物が入ってきました。→形状よし!かたさよし!温度よし!上唇・下唇による固定よし!ひと口量よし!前歯で噛み切って咀嚼ゾーンへと送ります!
【咀嚼ゾーン】歯・舌・ほお整然と並んだ歯のプレス機が食べ物をすりつぶします。ほおは食べ物がこぼれ落ちるのを防ぎ、舌は食べ物を唾液と混ぜて歯の上に戻します。繰り返されるうちに食べ物はとろみのあるかたまりになっていきます。
みなさんおなじみの「歯」という大きなプレス機で食べ物をすりつぶしていく工程です。でも、歯だけではこの作業はできません。「歯」「舌」「ほお」という3つの装置が連携して動かないといけないんです。
歯は主にものをプレスする、押しつぶす役割があります。
次に舌です。舌は筋肉のかたまり!舌が多様な動きができるのは、内部に筋線維が縦横無尽に走っているから。からだじゅう探しても、これはど筋線維が入り組んでいる器官はほかにはありません。
舌とほおもなくてはならない装置。舌が食べ物をうまく歯の上に戻せるのは、舌の構造のたまものです。舌の内部に縦横無尽に筋線維が入り組んでいるから、さまざまな動きができるのです。これほど筋線維が入り組んでいる器官は、からだじゅう探してもちょっと見当たりません。また、ほおの役割も見逃せないです。極端な話、歯がなくても歯ぐきです。でもほおがなかったら、噛むたびに食べ物がお口の外にこぼれ落ちちは食事ができるんですね。歯、舌、ほおが連携して咀するうちに、食べ物と唾液が混ざり合い、ドロドロしたかたまりになっていきます。ドロドロになった食べ物は、くちびるとほおの筋肉と舌の動きにより、咽頭つまり感下ゾーンへと送られます。
【嚥下ゾーン】咽頭・食道
ドロドロになった食べ物がコンベアーに乗って咽頭から食道へ。誤って気管に入らないように何重ものチェック体制が敷かれています。誤嚥、ダメ絶対!!
誤嚥につながってしまうのは主に舌の力の衰えによるものです。舌の力が弱まってしまうと変にむせてしまったり、お水を口の中で溜められないという障害が起きてしまいます。噛むことはできても飲み込むことはできない原因の一つです。
対策としては舌の筋肉をつけるトレーニングをお勧めします。舌で頬の外側をぐるぐる回すトレーニングです。たった数十秒行っただけでも非常に疲れるのでとても鍛えられます!!ぜひ始めてみてください!
当院でお口の機能を測り今後の予防対策を一緒に学んでいきましょう!