こんにちは!中里デンタルクリニックアシスタントの石橋です。
日毎に寒さが加わり、心細くなってまいりました。
さて、今回のお話は、口腔内細菌のお話です。みなさんは、お口の中に1000種類以上の菌が存在していることをご存知でしょうか。きれいに歯磨きしても100億個が棲み、雑だとなんと一兆個もあるなんてお話もあります。切っても着れない細菌との縁。上手に付き合っていく必要があります。今回はそんなお話です。
【油断大敵!カビの仲間カンジダ】
〈抗生物質が効かない疾病神〉
カビの仲間は真菌と呼ばれ、これまで取り上げてきた最近とは異なる微生物です。真菌類は動植物を分解して土壌に戻す自然界の掃除屋として、地球環境の保護に重要な役割を果たしてくれています。また、私の老後をおおいに豊かにしてくれている日本酒は、真菌である酵母なしには作れません。
真菌のカンジダは、口、腸、膣、皮膚などに常在しています。健康な人たちには病原性を発揮しない微生物ですが、抵抗力の落ちた人に「日和見感染症」を引き起こす疾病神の代表格です。
細菌が起こす感染症の特効薬といえば抗生物質。抗生物質は細菌を駆逐しますが、厄介なことに真菌のカンジダには効き目がありません。
それだけでなく、細菌感染症を治そうと抗生物質を長期間使用すると、カンジダと縄張り争いをしている常在細菌が消えてカンジダが生き残り、勢力の拮抗が破綻します。するとカンジダが爆発的に増え、日和見感染症であるカンジダ症を発症させてしまうのです。
〈高齢者の免疫低下を狙って虎視眈々〉
また、私たちに備わっている自然免疫は、通常はカンジダがやすやすと増えないよう抑え込んでくれています。ところが高齢になって免疫力が低下すると、カンジダはその隙を狙って増殖し、ヌルヌルベタベタするバイオフィルム集団を作り舌や口蓋、頬粘膜などにくっついて、痒みやピリピリとした痛みのある炎症を引き起こします。これが、「口腔カンジダ症」です。
口腔カンジダ症を予防するために一番大事なのは、お口の中を清潔にすることです。特にカンジダは舌の上で増えやすいので、歯磨きの後に、舌ブラシで舌を軽くこすってお掃除をするのが効果的です。
また、油断してはならないのが、入れ歯の表面にヌルヌルと付着するバイオフィルム。この正体も実はカンジダです。
入れ歯についたカンジダは、「義歯性口内炎」を起こす張本人です。通常であれば大したことのない入れ歯による刺激を、辛い潰瘍へと悪化させてしまいます。
〈入れ歯をお手入れして発症の予防を!〉
このヌルヌルの除去に一番効果的なのが、入れ歯用の歯ブラシなどを使ってこすり落とす方法です。その次に効くのが、入れ歯洗浄剤を使った除菌。入れ歯用歯ブラシで磨いてから入れ歯洗浄剤にドボンと漬けるのがカンジダ退治に最も有効です。両方行うことで清掃効果がさらに上がるので、洗浄剤に漬けるだけでなく入れ歯磨きもし、1日1回はしっかりとヌルヌルを取り除いて口腔カンジダ症や義歯性口内炎を防いでいきましょう。
【カンジダ・アルビカンス】
●性格
・周りの様子を見ながら仲間を増やす日和見主義
●得意技
・抗生物質なんてへっちゃら
・ヌルヌルベタベタを作って住み着く
●好きなもの
・湿り気と酸素