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教えて!歯医者さん

みなさん、こんにちは!中里デンタルクリニック.アシスタントの石橋です。 連日、厳しい残暑が続いていますね。 今回は、治療を受けた後になって湧いてくる不安。歯科医院に対する本音の不安。そんな本音の質問にお答えします。 【Question】 うちの子の奥歯(乳歯)に大きなむし歯ができてしまいました。 「神経にまでむし歯が広がっているので、神経を取ったほうがいいでしょう」と言われたのですが、神経を取ったら、永久歯がちゃんと生えなくなってしまうのでは? (30代・主婦) 【Answer】 永久歯の芽は、乳歯とは離れた場所に育っていますので神経(歯舗)を取っても 永久歯に影響はありません。 むしろ、神経にまで広がった むし歯を放っておくほうが 永久歯に悪い影響を与えます。 〈解説〉 患者さんが「歯の神経」と呼んでいる組織は、歯科では「歯髄」と呼ばれています。歯髄は、神経の他に、血管と歯髄細胞からできています。  歯髄細胞の多くは「線維芽細胞」で、歯髄を覆っている象牙質を作ったり、歯に加わる刺激を感じる機能を持っています。一般的に「神経」と呼ばれるのはこのためです。  乳歯は上下に20本、5種類あり、歯科では「ABCDE」とアルファベットで呼んでいます。最初に生えるAは胎生7週で歯の芽に当たる「歯胚」が顎の骨の中ででき始め、1歳半ごろには歯の根まで完成します。想像以上に早いですよね。もっとも遅いEでも胎生10週ごろにでき始め、3歳ごろに完成します。  一方、永久歯は親知らずを除いて上下に28本、7種類あり、歯科では「1番」や「7番」などと番号で呼んでいます。1番は胎生5ヶ月〜5ヶ月半ごろに歯胚ができ始め、生後4、5歳で歯の根まで完成します。対して7番は生後3歳半〜4歳ごろに歯胚ができ始め、14〜16歳ごろに完成します。このように乳歯と永久歯は全く異なる時期に顎の骨の中でつくられます。ですから、虫歯になった乳歯の歯髄をとっても、永久歯が育たなくなったり、永久歯の歯髄=神経がなくなることもありません。  乳歯は、永久歯に比較してエナメル質も象牙質も薄く、カルシウムの密度も少ないため、虫歯の進行が早いです。虫歯菌が歯髄まで到達しやすく、歯髄を取る治療になりやすいとも言えます。  乳歯の歯髄をとっても永久歯が育たなくなることはないと言いましたが、乳歯そのものには影響が出ます。歯髄がなくなると、象牙質への栄養の補給ができなくなるからです。そのため、歯髄がなくなった乳歯は割れやすくなります。また、歯髄がなくなると、乳歯の歯根吸収の制御が難しくなり、永久歯へ生え変わる時期なのに 歯の根が長いままで乳歯が自然に抜けない、あるいは通常よりも早く歯の根が短くなって乳歯が抜け落ちてしまうこともあります。  それなら「やはり歯髄は取らないほうがいいのかな?」と思われるかもしれませんね。しかし、歯髄まで広がった虫歯を放っておくと、永久歯の成長に影響します。永久歯は乳歯の根の先で作られていますので、乳歯の根の先から、その下の顎の骨に炎症が広がると、永久歯の歯胚に細菌感染が及びます。歯胚に細菌感染が及ぶと、永久歯の歯質に形成不全が起こることがあったり、乳歯の根の先にできた膿により永久歯の歯胚の位置が変化して、歯がまっすぐ生えてこないこともあります。  まとめると、①乳歯の歯髄に虫歯が広がっている場合、歯髄をとっても永久歯が育たなくなることはなく、②むしろ歯髄をとって炎症を止めないと、永久歯の成長に影響が出る恐れがあると言えます。