こんにちは、歯科衛生士の木村です。
本日はアルツハイマー型認知症に関わる菌についてご紹介します。
【暴かれはじめたトレポネーマ菌の正体】
以前のブログで、歯ぐきの歯周ポケットのなかに棲む「トレポネーマ・デンティコーラ」についてお話ししました。この菌は歯周病菌の総帥、ジンジバリス菌とタッグを組んで悪さをしている歯周病原菌、悪玉3兄弟の一員です。
この菌の歯周病原菌としての仕事ぶりは、ジンジバリス菌にくらべると地味なので、からだに入り込んだとしても「それほど凶悪ではないだろう」と長らく思われてきました。
ところが近年、分子生物学の進歩によって、このトレポネーマ菌の恐ろしい正体が徐々に明らかになってきています。どうやらこいつは、国内で増え続けている「アルツハイマー型認知症」に関わっているらしいのです。
細菌学者の野口英世博士が梅毒患者の脳内で発見した梅毒トレポネーマ菌。これはトレポネーマ・デンティコーラと同属で、脳の神経障害を引き起こす怖ろしい細菌です。じつは歯周病原菌のトレポネーマ菌も、高齢者の脳内に入り込み悪さをしていることがわかってきました。
【アルツハイマー型認知症の脳で見つかるトレポネーマ菌】
国内約3600万人の高齢者のうち、17%近くが認知症を患い、その過半数がアルツハイマー型認知症だといわれます。このアルツハイマー型認知症の人の脳に、ジンジバリス菌とともに高率で見つかったのがロ腔由来のトレポネーマ属です。アルツハイマー型認知症を患っていない人に比べ、非常に高い検出率でした。(上のグラフ参照)。
口腔由来のトレポネーマ属が脳にどんな悪さをしているかは未だ不明です。しかし、義兄弟のジンジバリス菌の悪行は明らかになっています。脳内に感染すると炎症物質が放出され、アミロイド8(老廃物)が沈着。これがベタベタのアミロイド8プラークとなり脳を萎縮させるのです。まさにその現場から、高頻度でトレポネーマ菌が見つかっています。
【高齢社会の最重要課題は歯周病の予防と治療】
アルツハイマー型認知症を減らすには、やつらの棲家である歯周ポケットを歯科で掃除し、やつらを追い出すこと。超高齢社会の最重要課題は、「歯周病の予防と治療」です。
【トレポネーマ菌のご紹介】
▼本名
トレポネーマ・デンティコーラ
▼性格
・忙しく動き回じっとしていられない
・冒険好きでからだのあちこちに出かける
▼得意技
・細い体をきりもみ運動させ脳に入り込む
・たどりついたところに棲みつくと、分裂して仲間を増やす