サイレントキラー『ジンジバリス菌』
みなさん、こんばんは!中里デンタルクリニック.歯科衛生士の田中です。いかがお過ごしですか?寒暖差が激しい季節になっていますので体調に気をつけてください!
今回は、サイレントキラー:ジンジバリス菌についてお話しします。
『ヒポクラテスの教えは正しかった?!』
歯周病菌はおろか、「細菌」の存在すら知られていなかった紀元前400年頃に、ギリシャはコス島のプラタナスの木陰で、弟子たちに患者の歯石を取り除くよう説いていた医師、「医学の父」と呼ばれるヒポクラテスです。
ヒポクラテスは、「歯周病を治さないと全身の健康が回復しない」と弟子たちに教え、なんと歯石を除去するスケーラーまで開発していました。
そしていま、分子生物学や免疫学の怒涛の進歩により、この教えが正しかったことがつぎつぎ裏付けられています。歯石に隠れる歯周病菌の親玉、ジンジバリス菌がさまざまな全身疾患に関わっており、私たちの体内で静かな暗殺軍団として跋扈していることが明らかになったのです。
ジンジバリス菌をはじめとした歯周ポケット内細菌は、ネバネバのデンタルプラークをつくり、歯周ポケットの奥や歯石の表面に増えます。そして歯ぐきの細胞に入り込み、歯周病の炎症を起こします。やつらはさらに歯ぐきから血流に乗り、血管の細胞にも潜り込みます。
心臓外科の専門家と私たちが行った共同研究では、心臓を取り巻く動脈
の血管内壁プラークから、実際にジンジバリス菌などの歯周ポケット内細菌が見つかり、この発見は世界に先駆けたものになりました。
『血管にひっそり感染命を狙う?!』
ジンジバリス菌は、自らの強力なタンパク質分解酵素のジンジパインや線毛を使うだけでなく、デンタルプラーク仲間の大型細菌フソバクテリウムと手を組み、タンネレラ菌・トレポネーマ菌と悪玉3兄弟を結成し、突破力を高めて血管細胞に侵入して行きます。じつはこのジンジバリス菌が関与しているのが、血管が詰まる動脈硬化症です。動物性脂肪や肥満、喫煙、運動不足との関係はよく知られていますが、お口由来の細菌が関与しているとは、驚くかたも多いのではないでしょうか。
ジンジバリス菌は、血管内に入り込むと、白血球の死骸や悪玉コレステロールとドロドロにからみ合い、血管に貼りつく血管内壁プラークをつくります。やつらはひっそりとこの悪行を働くため、動脈硬化症は無症状のうちに進行します。
血管内壁プラークが剥がれて脳血管を詰まらせれば脳梗塞、心臓の血管を詰まらせれば心筋梗塞。歯ぐきから血管に入り込んだジンジバリス菌は、私たちの命をこうして脅かしているのです。
『知ってほしい!!デンタルプラークの本性!?』
デンタルプラークはよく「歯垢」と呼ばれます。しかし、この実態と甚だしく乖離した、いかにも無害そうな用語は決して使うべきではありません。
デンタルプラークは細菌どもが集団となるためにつくるネバネバで、その内部ではやつらが増殖し、結託し、うごめいています。デンタルプラークは私たちの健康を破綻させる「暗殺集団」なのです。